『脱!ひきこもり』を読んで

寮生H

 そもそも私がこの本を読もうと思ったのには2つの理由があります。1つはタメさんが、ひきこもりの人をどう見ているのかを知りたかったということ。もうひとつは、本書には実際にひきこもりを経験した人のエピソードが載っており、それに興味があったからです。タメさんはひきこもりの人を次のように言っています。

「すべての人に対して平等に本気を出して付き合おうとしてしまう。私はそんな彼らを人間関係の構築が下手だなとつくづく思う。」

 性格や性別、過去の境遇など、誰もが皆違う「個の人間」なのに、人付き合いが苦手な点は共通している。その理由は、おそらく家にひきこもっていたころの環境が、そうさせたのではないかと思います。

 これは、自分の経験上ですが、家に籠ると外部からは、なにも刺激はありません。突然人と会う事も無いので会話をすることもなく、ただ時が過ぎます。すると不思議なことに、人と会うのが恐くなります。おまけに日本語も忘れます。

 普段書かない漢字を書こうとすると、書けなくなるように、人と会わないと感覚を忘れます。それが結果として、人に対する苦手意識を生むのだと思います。

 ですが、再び使えば所々に戻ってくるので、あまり心配することもないと思っていました。

 

「彼らは、成長の過程で経験をしておくべきことを経験していない為、社会性が身に付いていない」とも言っています。

 

 これも、先程の話と共通していて、自分だけの生活を送っていると、周りとの協調性がなくなります。

 すると、「挨拶をする」「遅刻をしない」「時には自分の非を認め、素直に謝る。」など社会人として生きる上で、当たり前なことが出来ない人間になります。

 この点は自分も例外ないので、気を付けたいと思います。

「ひきこもりの若者たち」というタイトルで、本書にはエピソードが載っています。

 その中で印象的に残ているものと言えば、タメさんが家庭訪問をしていて、江藤君という19歳の子を実家から寮に連れて行くまでのやりとりです。それはまるで駆け引きのようでした。

 初回の訪問は両親と、会話をするだけですが、実は会話をしながら本人の反応を、足音で判断したそうです。

 訪問の回数を重ね、今度は本人のいる部屋を訪ね、ドア越しに一言挨拶をしながら手紙を渡して帰り、後日親御さんから本人の様子を聞きます。この頃になると、最初こそは無反応で部屋の雨戸を閉じたままだった江藤君も、次第に雨戸を少し開け、タメさんの様子を伺ったりして反応を示します。やがて機が熟すといよいよ、本人と直接会って説得をし、成功したら車で寮に連れて行く。

 その一連の動きを早くて半年、長くて三年かけてじっくり、本人との距離を詰めていく、私はそんな動きに「綿密に行なっているのだな。」僭越ながら感心しました。

 私は今回の読書を通して、改めて家にひきこもるのは良くない事と、そこから脱し、社会に戻る為のヒントを得られました。1人で考え込むと物事を主観的に見てしまうので、客観的な情報は参考になります。

 寮での生活は、自分との葛藤の日々ですが、1人前の社会人になる為、一歩一歩前に進みたいと思います。